| ウツダの挙げたふたつの条件は、一見犯人を限定するうえで非常に有効だと思われる。しかし、実は、ふたつとも犯人を絞る条件としてはまったく不完全だ。
まず第一にノートの表紙の識別可能性だが、これは全く問題にならない。なぜなら、ルナ殺害の犯人がノートを破ったという確実な証拠はないからだ。
次に、コートの識別可能性だが、これも同じく問題ではない。もし彼女が殺害されたときに赤いコートを着ていたとするならば、桂以外にも犯人がコートを識別できたことになる。もし彼女が他のコートを着ていた場合、その赤いコートはずっと西大路のマンションにあったことになる。さて、そうなると、犯人は一体いつ、彼女のコートにチケットを入れたのか?だからこの場合問題となるのは、コートの識別可能性ではなく、西大路のマンションへのアクセシビリティだ。
さて、以上のふたつにもとに考えると、桂が犯人とは断定できない。彼女が特に、西大路のマンションに出入りできたとする根拠はない。それどころか、西大路以外に犯人はありえないことになる。
というわけで、犯人は西大路。なるほど、「今回は簡単」というわけだ。くけけけけけ
…これではあんまりだ。
というわけで、一から考え直す。すると、今回の事件の背後に存在する、ある仕組みが見えてくる。
それは、「霊視誘導システム」。つまり、何者かがルナの霊視の内容を事前資料や VTR にもとづいて操作し、自分が犯人とされないような事件の全体像を描くこと。
さて、誰がそんな誘導をできる?
それは…ディレクターの岩倉。
霊視誘導システムの証拠はない。ただ、このシステムを仮定すると、全てが上手く説明できるというだけ。仮説、妄想、おとぎ話。好きなように呼べばよい。
ただ、ひとつだけ、証拠となりうるものがある。それは、ルナの霊視のなかで、犯人しか知りえない情報で、かつ後から細工してごまかすことができないこと。それは、死因。三条のが絞殺されたということ。
さて、ルナが三条の死因を絞殺だと霊視したのはなぜ?それは例のドラマ。だから、あのドラマが岩倉によって、なんらかの方法で、あの部屋のあのテレビに流されていたことを示せばよい。
ただ残念ながら、私が見た限りでは、そうした証拠は発見できなかった。
これを読んでいる私以外のあなた。 どうか真相を。
それだけが、私の望みです。
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